富士ソフトの5G対応モバイルWi-Fiルーター「+F FS050W」を購入した。
筆者がキャリアモデル以外のSIMフリールーターを買うのはNEC Aterm MR05LN以来である。
どんな製品なのか
スペック
製品名 | +F FS050W |
型番 | FS050WMB1 |
サイズ | 約120mm(高さ) 約74mm(幅) 約19mm(厚さ) |
質量 | 約198g |
通信方式(ネットワーク側)(※1) | 5G:最大受信速度:2.8Gbps/最大送信速度:460Mbps |
4G:最大受信速度:1.6Gbps/最大送信速度:200Mbps | |
通信方式(端末側) | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax 最大1,201Mbps |
対応周波数(※3) | 5G:n1、n3、n28、n77、n78、n79 |
4G:バンド1(2.1GHz)、バンド3(1.7GHz)、バンド8(900MHz)、バンド18(800MHz)、バンド19(800MHz)、バンド26(850MHz)、バンド28(700MHz)、バンド39(1.9GHz)、バンド41(2.5GHz)、バンド42(3.5GHz) | |
無線LAN(※4):2.4GHz/5GHz | |
連続通信時間(※5) | 5G:9時間 |
4G:11時間 | |
動作環境 | 動作温度範囲:0°C~35°C |
保管温度範囲:-20°C~60°C | |
無線LAN最大同時接続数 | 32台 |
USB接続数 | 1台 |
セキュリティ | WPA-PSK,WPA2-PSK,WPA3-SAE |
対応SIM | 5Gおよび4G対応SIM(形状:eSIM×1、nanoSIM×1) eSIMは最大8件までアクティベーションできます |
充電用端子 | USB Type-C端子(USB3.2 Gen1) |
バッテリー | リチウムイオンポリマー 4000mAh(3.8V)着脱式 |
国際ローミング | 非対応 |
表示言語 | 日本語 / 英語 / 中国語 |
※上記の表は、メーカーの富士ソフト公式Webサイトよりそのまま転記。
着脱式のバッテリーと、eSIMにも対応している所が競合機種との大きな違いである。
しかしながら、国際ローミングに非対応で、海外での使用自体が出来ない可能性があり、この仕様は非常に残念である。
国内4キャリアにほぼ対応している
対応周波数(※3) | 5G:n1、n3、n28、n77、n78、n79 |
4G:バンド1(2.1GHz)、バンド3(1.7GHz)、バンド8(900MHz)、バンド18(800MHz)、バンド19(800MHz)、バンド26(850MHz)、バンド28(700MHz)、バンド39(1.9GHz)、バンド41(2.5GHz)、バンド42(3.5GHz) | |
無線LAN(※4):2.4GHz/5GHz |
※富士ソフトの公式サイトから抜粋した対応周波数表
「+F FS050W」は、5G NSA/SA、4G(FDD-LTE/TD-LTE)に対応している。
一方で、5Gミリ波、3G、2G(GSM)には対応していない。
F+ FS050W | docomo | au | SoftBank | Rakuten |
4G LTE | ||||
B1 | ◯ | ◯ | ◯ | |
B3 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
B8 | ◯ | |||
B11(非対応) | ✕ | ✕ | ||
B18 | ◯ | ◯(パートナー回線) | ||
B19 | ◯ | |||
B21(非対応) | ✕ | |||
B26 | ◯ | |||
B28 | ◯ | ◯ | ◯ | 予定? |
B41 | ◯ | ◯ | ||
B42 | ◯ | ◯ | ◯ | |
5G NSA/SA | ||||
n1 | ◯ | |||
n3 | ◯ | ◯ | ||
n28 | ◯ | ◯ | ◯ | |
n40(非対応) | ✕ | |||
n77 | ◯ | ◯ | ◯ | |
n78 | ◯ | ◯ | ||
n79 | ◯ | |||
n257(非対応) | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
※上図は2023年10月時点の情報
日本の大手4社の電波にすべて対応しているものではないが、上図を見て頂くと分かる通りほとんど対応していると言って大丈夫だろう。
特に、楽天モバイルに至っては5Gのミリ波以外には現時点で全対応しているので全く問題ないと言って良い。(楽天が新規で取得したプラチナバンドと呼ばれる700MHz帯は本機でも使用できるはずである。)
特定基地局開設計画(“プラチナバンド” 700MHz帯割当)の認定について | 楽天グループ株式会社 https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2023/1023_01.html
auのn40については対応していないが、現時点では影響はない。ただ、今後auとしてもn40でのエリア整備に本腰が入った際には、不便に感じる可能性はある。
国内初、ダイナミック周波数共用活用で2.3GHz帯を運用開始 | 2023年 | KDDI株式会社 https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2023/07/31/6885.html
また、auとSoftBankで使用している1.5GHz帯のB11については、そもそもau/SoftBankから発売されている機種でも非対応モデルが多く、非対応でも大きな問題はないと思われる。
実際に使ってみて
安定性・バグ関係
APN自動設定機能
一部対象外のSIMカードはあるとしているものの、docomoの5Gギガホプレミア契約のSIMカードについては自動的にAPN設定をしてくれなかった。技術的に難しいことなのかもしれないが、一部の対象外にdocomoのMNOが含まれているとは思わなかった。
インターネットに繋がらない事があった
相性問題なのか、故障しているのか、設定が間違っているのかは解らないが、Galaxy S23 Ultraにて「インターネット接続なし」と表示される事があった。
ダイアログから「常に接続」を選択することで、オフラインと認識されていても強制的に繋ぐ事はできるようになったが、これをするまではいつの間にかモバイルデータ通信に戻ってしまい、別回線のデータを使用してしまうという問題が発生した。
サポートに問い合わせたが、「4G/5Gの電波が弱いのでは」と指摘を受けたが、電波強度的にも問題がないエリア出ることは確認済み。サポートに問い合わせても結果的に解決することはなかった。
製品の初期不良か、バグを疑っている。
便利な機能
バンド固定機能
本製品の購入する最大の決め手となったのが「バンド固定」だ。
実はF+ FS050Wが発売されたときに気になってチェックしていたものの、購入を見送っていた。しかしながら、バンド固定機能が実装されたと聞いて購入を決めることとなった。
対応している周波数のうち、何らかの都合や検証のために接続をしたくない周波数があれば、この機能が役に立つ。
十分な知識がないままに操作をすると、圏外になってしまったり、通信速度が著しく遅くなったりする可能性もある。明確な理由がない場合は操作しないのが賢明な機能だと言える。
電源ON/OFFタイマー
本体の電源をオンオフする日時を決めておくことが出来る。最大で14件まで登録出来る。
完全に電池切れになると、この情報は削除されてしまうそうなので注意が必要である。
私の場合、ルーターは基本的に車の中に置きっぱなしである。
仕事に向かう時の車内で使い、職場に到着したときには職場に持ち込んで使用している。
帰宅後は車に置きっぱなしにしておき、朝まで使うことはない。
この用に電源ON/OFFタイマーが使えると、この一連の流れにおいて電源ボタンを押す操作が一切不要になる。
5GHz帯(W52)は屋内・車内のみでの利用が許可されており、5GHz帯(W56)のWi-Fiは屋外で使用する場合、気象レーダーとの干渉を防ぐためDFS機能が作動し1分間の電波検知を行う。この1分間は、5GHz帯域のWi-Fiを使えない。これは地味にストレスである。
しかしながら、タイマーで起動させるようにしておけば、その待ち時間も気にしなくて良くなる。
設定出来る時刻が1時間刻みなのはちょっと使いにくい。分単位で無くとも、10分単位くらいで選べたらより使い勝手が良かったと思うだけに少々残念である。今後のアップデートに期待したい。
5G SA固定が可能
本機は5G SAに対応しており、5G/4Gネットワークの設定から5Gを選択することで5G SAにのみ接続をする事が可能である。
ただ、2023年時点で5G SAに対応している基地局は、全キャリア共にかなり限定的であり、殆どの地域では圏外となってしまうことは留意して頂きたい。またキャリアによって別途オプション契約やSIMカードの交換が必要となる。
docomoが公表している5G SAエリアに、渋谷のスクランブル交差点がある。
先日はそこに行き、5G SAに接続ができるか試してみたが、問題なく接続することが出来た。使用した回線は、docomo 5Gギガホプレミア回線で、オプションの5GSA契約も行っている。
docomo 5GSAに接続できる環境を揃えている人はかなり少ないと思うが、それでも通信速度は下りで50Mbps程度しか出なかった。様々な要因が考えられるが、F+ FS050Wに問題があると考えている。というのも、別の場所でテストした際にGalaxy S23 Ultraで1Gbps以上出ていたのに対し、F+ FS050Wでは30Mbps程度しか出なかった。あまりにも乖離しているため、F+ FS050Wに問題があるような気がしてならない。
今後、5G SAのエリアも増えて行き、出先や自宅で使用なら5G固定して運用が出来る日が来れば、大容量で高速な5Gを楽しめるようになる。期待したい。
参考までに、2023年11月8日時点のdocomo 5GSAマップ(提供中・予定)をマップ上に落としたので、参考情報として置いておく。
バグや不具合はまだ残り、万人向けではないルーター
発売直後にも沢山のバグや不具合があったようだが、その多くは既に修正がされている。
しかしながら、まだバグや不具合が残っている状況である。
製品のアップデートはまだ続くと思われるため、少しずつ改善されることに期待したいのだが、サポートのやり取りを経て対応能力が欠如していると感じた。メールの返信も全然してもらえず、専門的な会話も成立しなかった。
そのため、不具合が多く残る現段階での購入はおすすめしない。改善される保証がないからだ。
非常に申し訳ないが、過去10年以上にわたり購入してきたモバイルWi-Fiルーターで最も完成度が低い製品であると感じた。
5GSA固定対応、eSIM/nano SIMの両対応、脱着可能なバッテリー、バッテリーレス運用、4G/5Gバンド固定機能など、競合する他社製品には無い多彩な機能は魅力的である。
海外での使用を考えている方には、NEC Aterm MR51FNも候補に入れてみると良いだろう。
筆者はNEC Aterm MR51FNも候補に入れて検討をしていたが、F+ FS050Wより実売価格は安いものの、便利な機能が多いF+ FS050Wを選択した。
対応している周波数はNEC Aterm MR51FNのほうが多いので、細かなこだわりがない場合はNEC Aterm MR51FNを購入するのもありかもしれない。
今後のアップデートによる改善に期待をしたい。